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トムラウシ山遭難の最終報告書を読みました [山の本、TVなどメディア関係]

 去年7月、死者8人を出したトムラウシでの大量遭難について、日本山岳ガイド協会がまとめた最終報告書を下記のページで読みました。

http://subeight.wordpress.com/2010/02/25/20090716-tomuraushi-report/

3月1日から日本山岳ガイド協会のHPにも公開されています。
http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf

 92ページに及び、関係者へのインタビューを通じてまとめられた事故経過や、気象の検証、低体温症の検証、それに日本山岳ガイド協会からの提言などが収められています。一応最後まで読みました(しんどかった~)。

 当初から指摘されていたガイドの責任について報告書では、ガイド3人は天候やメンバーの体調、コースについての情報共有を積極的に行った形跡がなかったとしています。
 そのうえでヒサゴ沼を出発して稜線で強風に吹かれた時点で、引き返す判断ができなかったかと疑問を投げかけています。
 ガイドの判断はその場その場で各人がバラバラにしており、危機意識の共有がなされていなかった…3人のガイドの間にリーダーシップおよびフォロワーシップが欠如していたとしています。

 また稜線に出て強風にさらされた時点で低体温症の症状がツアー客に出ていた可能性を指摘。つまづいて転倒したり、他の人の助けを借りての歩行、呂律の回らない言葉、口ごもったり、時折意味不明な言葉を発する初期症状が出ていたとのこと(34~35℃の症状)。
 これ以上低体温症が進行すると山では回復できず、死に至ることがあるとしています。

 気象については(このパーティーはラジオを持っていない)、遭難した当時の気象はトムラウシでは特別なものではなく、また北アルプスでも寒冷前線通過時には凍死をも伴う「強風、低温」が夏山でも起きうるものであること。

 報告書では、登山の現場とはかけ離れたところで企画・運営していたツアー会社、アミューズトラベル社の責任を指摘したうえで、ツアー募集にあたっての記述の工夫や、山行の困難度を表す☆印の平準化などを提議しています。
 また「募集基準が甘かったように思う」とツアー客側の問題も言及しています。ツアー登山客の自己責任はどこまで求められるのか?ツアー登山は今後もなくならないでしょうが、どのようにしてリスクを回避していくのかは非常に難しいです。

 かといって大学山岳部や社会人山岳会がかならずきちんとしているとは言えないのですが、報告書では同じ日に同じコースを行きながら無事下山した静岡の伊豆ハイキングクラブもとりあげています。ミーティングや歩荷訓練などの事前準備に加え、調子を落とした(低体温症の症状が出ていた)メンバーへのサポートなどを読みますと「パーティーシップの尊さ」を感じずにいられません。

◆関連エントリ
NHKクローズアップ現代「“夏山の惨事はなぜ起きた」を見た(2009/7/31)
大雪山系・トムラウシ大量遭難を考える(2009/7/18)

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