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映画「フリーソロ」 Rock&Snowのインタビューから伺えるオノルドの論理的思考 [山の本、TVなどメディア関係]

 アレックス・オノルドが凄いとは聞いていましたし、雑誌等でも読んだことがありました。しかし百聞は一見にしかず。この映画を見るとその類まれな技術、諦めない努力、緻密な準備、そして何よりもそのタフな精神力を持っていることがわかります。

 念のため説明しておきますと、フリーソロとはロープを使わずクライミングすることで、墜落は一切許されません。

 ハーフドームでも初のフリーソロをしたことで知られるオノルドが次の目標としたのは、必然と言っていいでしょう、エル・キャピタンです。ルートはフーバー兄弟が初登した「フリー・ライダー(5,12d)」です。南西壁に築かれた全長1,000mに及ぶサラテルートのバリエーションということです。

 これまでと違うのは、お付き合いしている彼女がいることと、ジミー・チン率いる撮影チームが彼を取り囲んでいることです。映画ではこうした内面に影響を与える外的要因を丁寧に対処していくオノルドを描き作品に深みを与えています。

 そして圧倒的なクライミング・シーンが展開されるのです。



 カメラマンが「(墜落が怖くて)見ていられない。次の仕事はもう受けない」と半分目を覆いながら撮影しているのがリアルでした。見ているこちらも完登を知っていながら、もうドキドキです。ジミー・チンは「メルー」でも監督をしていますが、今もっとも活躍している山岳監督なんでしょうね。

 ちなみにエル・キャピタンをフリー・ソロした直後のROCK & SNOW 077(2017秋)にオノルドのインタビューが載っていて、カメラマンがいることに違和感はなかったか、聞かれています。

変といえば変でしたが、カメラマンたちはもう何年も一緒に仕事をしてきた連中だったので、そんな彼らが壁の中にいて、むしろくつろげましたよ。核心のパートには、彼らはリモートコントロールできるカメラを設置していたので、誰もいませんでした。もちろん、ほとんどのところで”独り”を感じていました。その時の映像を見ると、本当にエキサイトしますよ。(中略)連中、実にいい仕事をしていますよ。見事な映像作品になるでしょう。


 また全体を振り返って、何を得ることができましたか?と聞かれると

一見不可能な目標を打ち立て、それを細かく分け、おのおのの部分をひとつずつ片付けていく。そして、その過程で結果については考えない、ということでしょうか。 


 内省的に物事を捉えようとする一流のクライマーに通じるものがあるようです。すごく謙虚で論理的な考え方だと思います。以前ウエリ・シュテック(映画でも触れられていましたが、この人も死んでしまった…)の謙虚な言葉にも感心したことがありましたっけ。

 Rock&Snow080(2018夏)には来日時のインタビューも載っています。ポケットに入れたiPhoneで音楽をかけながら登ったなんてエピソードもありました。映画を見てからこうしたインタビューを読むのも楽しいもんですね。









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