年末に南八ヶ岳の阿弥陀岳南稜に行ったのですが、途中でテルモスを忘れたのに気付きました。おまけにペットボトルなどの水をことごとく凍らせてしまいました。ペットボトルを寝袋の中で抱いて寝ることさえしなかったので、結果は当然です。朝食時はコーヒーなどでたっぷり水分をとりましたが、行動中はまったく水分を摂ることができませんでした。

 当初、阿弥陀山頂からは御小屋尾根を下る予定でしたが、身体を温めたかったので行者小屋に下りて、小屋でコーヒーを一杯頼みます。そしてすぐに出発。

 学生時代、美濃戸山荘に下山してきたときに、おばあちゃんが「どうぞ」とやかんのお茶を注いでくれました。たしか野沢菜ももらったのではなかっただろうか?うまかったのを思い出します。

 さすがにあの時から時間がたっているので「おばあちゃんももういないだろうな」と思いながら、さくさくと雪道を歩いていました。そして美濃戸山荘に着いてアイゼンを外していますと看板が目に入りました。



 あ~、あの時のサービスが続いているんだ。何十年も…

 お茶は本当に旨かった。生き返る思いとはこのことだと思った。行者小屋のコーヒーもおいしかったが、美濃戸山荘のお茶の方が身体全体に沁みわたるようでした。

 おばあちゃんは出てこなかったけれど、山荘の人らしきおじさんに「お茶おいしかったです。ありがとうございました」と挨拶すると、おじさんはちょっと笑って「気をつけて」と短く答えてくれました。

 僕は心の中でつぶやきます「さあ、あと少しだ」。