飯豊へ行くなら縦走したいとずっと思っていました。公共交通機関でなんとか行けないか考えましたが、夏季限定のアクセスバスはすでに終了。それでも「今行かなければいつ行けるかわからない」と自分自身を脅すようにして実行に移しました。



 夜行バスで米沢に着くとしっとりとした雨。
「え〜っ」
 山の上では覚悟していましたが、下界から雨とは予想していませんでした。JR米坂線で今泉駅まで。そこから22年8月の大雨以来続いている代行バスに乗って7時36分小国駅に着きました。予約しておいたタクシーに乗り換え飯豊山荘へ。のんびり運転のタクシーで8時15分ごろ飯豊山荘に着きました。



 さっそくゲートを越えて梶川尾根の登山道に向かいますが、いきなりの急登。吹き出す汗と高い湿度ですぐに全身がびっしょりと濡れてしまいます。途中からは雨も降りだして、雨具を着込みました。きっといい森なんでしょうけど、ずっと俯いて歩いていたのであまり記憶がありません。

アキノキリンソウ


 五郎清水で水を汲んで、やっと梶川峰に着くとなだらかな尾根歩きとなりました。



ウメバチソウ


 しかし稜線に出てみると西から猛烈な風が吹いています。「きょうの雨は想定内、あすさえ晴れればいいのだ」とあすの好天を期待して足を進めました。



 門内(もんない)の避難小屋の扉を開けると多くの人が寛いでいました。
「梅花皮(かいらぎ)の水場はじゃばじゃば出ているよ」
 もともとは門内小屋でテント泊のつもりでしたがまだ時間も早い。というわけできょうの宿泊地を梅花皮に変更。門内を14時前に出発しました。

マツムシソウ



(写真は翌日の撮影)

 強風で時々体を持っていかれそうになりましたが、梅花皮に15時半ごろに到着。小屋内に入って管理人の方と話し出すと、もうテントを張る空気ではなく、そのまま小屋利用としました(2000円)。
 聞いた話通り水場は水がよく出ていてビールが冷やされていたので一本もらいました(800円)。晩御飯は尾西のドライカレーとアマノフーズのカレー。
 小屋の外は相変わらず風が強く吹いていますが、夜行バスで疲れていたのか18時ごろには寝てしまいました。



 翌日は3時40分ごろに起きました。予定より早いですがお湯を沸かしてチキンラーメンとインスタント味噌汁とコーヒーをお腹に入れて出発します。小屋の外に出ると東の空が明るくなりかけていて、風は収まりつつあるようです。



 太陽が昇るとガスもきれてきて振り返ると北股岳がずーんとそびえていて朝日に照らされています。
きのうはガスの中だったのでわかりませんでしたが、こんな立派な山だったんですね。梅花皮の小屋がかわいいです。飯豊の小屋はみんなこじんまりしていていいですね、風景の中のアクセントとしていい味出しています。

イブキトラノオ




 前日ほどではありませせんが、西からの風がガスを吹き上げてきます。



 それも日が登るにつれてガスが切れて視界が広がってきました。おっ、おっ、おー、やった!



 いい稜線だな〜

 

 梅花皮岳、烏帽子岳を過ぎると先ほど見た緑の一直線に延びる稜線歩きです。





 御手洗いの池は青空が映り、天狗の庭では飯豊の最高点、大日岳が左右に尾根を伸ばす立派な山容を見ることができました。大日岳は日本百名山に選ばれていないため端折られることも多いようですが、この姿を見たら「登らなあかんやろ」と思ってしまいます。





 やがて御西小屋を出た登山者とすれ違うことが多くなってきました。面白かったのが「水場どうですか?」と情報交換することが多かったことです。どうやら小屋でも水が枯れているところがあって水の確保が大変なところがあるようです。きのうの梅花皮は例外だったのですね。

ヤマハハコ




 御西小屋に荷物をデポして大日岳をピストンします。往復2時間半かかるので結構なものです。(端折られるのもわかるような気がする…)

チングルマ


チングルマの種


 大日岳の頂上ではあいにくガスに包まれていましたが、一瞬だけ青空が見えたときがあって、その時は登山者の声のトーンが上がりました。





 御西小屋から飯豊本山へ。このあたりは広い尾根で、晴れていれば本当によい景色っぽい。





 飯豊本山の頂上ではパパっと写真をとって下りだします。もともとは本山小屋でテント泊の予定だったのですが、予定より早く行程をこなしているので、切合(きりあわせ)まで足を延ばすことにします。ここも普段の水場は枯れていますが、大日杉への道を行くと水が豊富に流れていました。





 テン場では夕立にあいましたがすぐにやんで、ビールとウイスキーの残りとご飯を食べて寝てしまいました。案の定夜中に起きてしまいましたが、テントのすきまから夜空を見上げると星空です。カシオペア座が見えました。



 翌日は4時45分ごろに出発して、剣ヶ峰の岩稜を経ました。結構緊張しました。



 途中電波が通るところ(地蔵岳の分岐)からタクシーを呼んで2時間後の9時に御沢で落ち合うことができました。運転手さんから「山都そばはおいしいよ」とさんざん聞かされて、その気になったのですが、まだ9時半でどこも開いていません。待つのも時間がもったいない気がして10時22分の磐越西線に乗って郡山へ向かいました。山都そばがちょっと心残りかな。
 それ以外は自分の体力、気力ともに充実した山行となった気がします。



 飯豊は大きい。その大きさに強くしてもらったような気分です。