映画「エヴェレスト 神々の山嶺」を見てきました。「KADOKAWA40周年」だけあって岡田准一、阿部寛、尾野真千子という豪華出演者に、ネパールロケを1カ月敢行と、金も時間もかけた大作です。

 レイトショーだったためかお客さんは少なくて、ゆっくり見ることができました。

 登山をやっている方ならご存知の方も多いと思いますが、作品のモデルとなっているのは、「狼は帰らず」で有名な森田勝(阿部寛)、ライバルとして長谷川恒男(佐々木蔵之介)です。

 やっぱり森田勝という人は、なかなか激しい人であり、今の時代には決していないタイプの人だなあと思います。戦争の影もまだ残っている時期ですし、社会人山岳会も勢いがあった頃です。山に命をかけるというところから、現代ではもう受け入れもされないのじゃないでしょうか。

 いわゆる「コンプライアンス的にアウト」というやつです。

 それでも、そうした人物に魅力があるのも確かなことで、こうしてモデルとして映画化されるのでしょう。

 さて映画ですが「マロリー」「エヴェレスト南西壁」という大舞台に「BCまで行く元恋人」と恋愛も絡まり、ちょっと収まりきれなかった印象です。最後は精神主義の言葉が繰り返されていましたが、原作もこうだったのでしょうか。

 また「登山家=社会に迷惑かける困った存在」というステレオタイプなものに見えたのは、私が登山者側で世の中に負い目を感じているからでしょうか?ヨーロッパの山岳映画ではこういうことを感じません(例えば「アイガー北壁」)から、これは日本と海外における登山家に対するリスペクトの差なのですかね…

 山岳監修に八木原國明氏がいるだけあって、クライミングシーンはわりと頑張っているなあと思いました。しかし谷川岳滝沢第3スラブが初登(1967)される頃にダブルアックスという技術があったのか?また当時すでにウィランスのシット・ハーネスがあったのかなどはちょっと疑問でした。国井治氏はトロールのシットハーネスの発売は1974年だとしています。

 あと協賛社のメーカーのロゴが目立ちすぎです(^ ^)

 とは言っても「エヴェレスト 神々の山嶺」は相当の意欲作です。日本の山岳映画の可能性を広げうる作品だったのですが、ちょっと内容を欲張りすぎたのが悔やまれます。邦画の製作者の方々には、さらに良い山岳映画をと望む次第です。