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NHK-BS「未踏峰への挑戦~野村良太のヒマラヤ日記~」で感じたこと [山の本、TVなどメディア関係]

 NHK-BS「未踏峰への挑戦~野村良太のヒマラヤ日記~」を見ました。ジャルキャヒマール6473m。タイトルにもなっている野村良太さんは北海道の分水嶺を積雪期に単独縦走(サポートあり)して植村直己賞をとった人だ。今回は体調不良であまり活躍の場がなかった。
 パーティーには大学山岳部出身で奈良県川上村でガイドをしている竹中雅幸さんも参加していた。竹中さんはリーダー格の人からサミッターとして疑問を持たれる。テント内で言い合いになるところなんかは久しぶりに見るパーティー内の不穏な雰囲気だった。やっぱり混成チームだとこういうことになるんだなあ。リーダーが責任を負ってるので、弱く見える者を連れて行きたくない気持ちもよくわかる。パーティーの足を引っ張りかねないからだ。竹中さんにとってみれば、いつもと違うタイプの人たちとの登りで自分の良さや強さを発揮できず、認めてもらうには時間が短いのだと思う。短期決戦だからなあ。よく山岳部や山岳会が単独で海外遠征できたら最高だ、と言われるがそれは本当だろう。どうしても疑心暗鬼になってくるもんだ。会社も含めて組織だとそういうことってありがちだもの。
 NHKの番組ページを訪れてみるとパーティー内の不穏さを感じたディレクターが、未踏峰に登る意義についてリーダーと4時間も話し合ったと書いてありました。その4時間の議論が見たくなりました(笑)。
 山は結局登れず。野村さんは日記を書いているのがドキュメンタリーの主人公として魅力だけれど、この人の指向性はヒマラヤのピークというより水平方向のそれではないだろうか。

[新月]?NHK総合で短縮版が放送されます。
2023年の12月18日(月)22:45?23:28
再放送が2024年1月1日(月)18:05?18:48
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NHK「もう一度、あの高みへ 登山家・平出和也 再起をかけた挑戦」で考えさせられた「43歳の壁」 [山の本、TVなどメディア関係]

 ピオレドール賞を3度も受賞したアルパインクライマー平出和也さんのドキュメンタリーを見ました。再放送分を録画していたものです。しばらく活動を聞かないなあと思っていました。わたし自身が山のクロニクルに疎くなったからかもしれませんけど…

 K2西壁の挑戦を目指し、そのステップとして2021年12月にカラコルムのカールンコー(6,977m)北西壁を三戸呂拓也さんと登るものの足に凍傷を負って敗退します。3本の指先を3ミリほど欠落する程度で「済んだ」そうです。

 番組では「登山家の43歳の壁」をキーワードとして呈示しています。植村直己、谷口けい、長谷川恒男…
 K2挑戦は当初2021年の予定でした。体力の衰えも感じる中、平出さんは「冒険家としては40歳前後が一番強いと思っている中で、この2年コロナで全く冒険ができていない。山は待ってくれると言う人はいるが、山は待ってくれない」と話します。
 平出さんは2019年のラカポシ南壁の様子を収めた「情熱大陸」でも体力の衰えを感じていると話していました

 作家の角幡唯介は「(43歳は)経験の拡大に肉体が追いつかなくなり始める年齢である」と著書で述べています。
 さらにインタビューで「経験値が高まっている分いろんなことができるって思うし、しかし(残りの)20年じゃできない。どうしても焦りが出てきて無理な行動につながる。相当なことをやりたいのとその先が短いんじゃないかという焦りとの葛藤がある時期」と分析します。

 平出さんは中島健郎さんと2022年9月にカールンコーに再挑戦します。3日をかけて北西壁を新ルートで攻略しました。2人の映像がふんだんに使われていてクライミングシーンはとても迫力がありました。平出さんは、かつての自分より足取りは重くなっているのを自覚しながら、それを受け入れているようでした。なかなか良いドキュメンタリーです。さてK2には挑戦するのでしょうか?

 自分の登山歴を振り返ると、40歳でアルプスでの岩登りを再開していました。43歳は北アルプスの岩稜ルートに行ったり、年末年始の八ヶ岳を登ったりしていました。
 それ以前の怠惰な生活で自分の体力、技術ともに底辺だったために「無理をする」どころではなかったのですが、「焦り」は感じていたと思います。
 加齢とともに思うのは「山は待ってくれない」です。そういう意味では、今の方が「無理をする」タイミングなのかなと自戒を込めて思う次第です。気をつけよう。

【平出和也 未踏峰未踏ルート】番組の調べより
2003 クーラ・カンリ東峰 7,381m
2004 ゴールデン・ピラー北西稜 7,027m
   ライラピーク東壁 6,096m
   ドルクソム・スターグ 6,355m
2005 シブリン北壁 6,543m
2008 カメット南東壁 7,756m
2011 ナムナニ南西稜 7,694m
2016 ルンポカンリ北壁 7,095m
2017 シスパーレ北東壁 7,611m
2019 ラカポシ南壁 7,788m

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NHK「大雪山〜究極のパウダースノーを滑る〜」を見ました [山の本、TVなどメディア関係]

 NHKの総合とBSで北海道・大雪山を滑る3人のおじさん仲間のドキュメンタリーが放送されました。

 かつてNHKは山岳班が普段から訓練をしていて、山岳モノでは独壇場でした。しかしGoProなど動画撮影機器が発達して、登山者自らが行程そのものを撮影しだすとそのリアリティさにおいて勝てるわけがなく、一時より存在感がありません。

 登山者が動画を撮影し出したのは、タレントのイモトさんがバラエティ番組で世界各国の山に挑戦した頃からでしょうか。ヘルメットなどに備え付けたカメラが行動の一部始終を記録するのですから、映像の質はともかくリアルさにおいてはこれ以上のものはありませんでした。

 さて今回の大雪山の3人は、48歳の登山ガイド、48歳の農家、60歳の元秀岳荘の店長です。農家の人は九州出身で若い時に北海道のスキーに出会い、以来移り住んで農家を始めたとのこと。元秀岳荘の店長は学生の頃にテレマークに出会い、以来国際大会で優勝するレジェンドで、60歳の定年を前に早期退職しました。3人に共通するのは「これからの人生をいかに生きるか」です。

 農家の人が「若いときは優等生だったが、ほかの人に褒められるような生き方を目指すのではなく、自分自信でやることを決められるように生きたい」旨のことを言っていました。モハメド・アリも同じようなことを言っていたなあと思い出しました。

「他人が望む人間ではなく、私は私がなりたい人間になる」

 天候が安定せず、長い間沈殿が続いた山行ですが、最後に好天に恵まれ、それぞれが「最高の一本」のシュプールを描きます。その様子をドローン、スローを駆使して撮影します。パウダーの質感はさすがの映像でした。
 やっぱりドキュメンタリーという形をとった映像はまだまだプロの取材者としての視点が活きてくるなと思いました。まだまだプロの映像表現はバカにしたものではないと思った次第です。

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黒部横断パーティーが滑落…緊迫の救助 Youtube富山県警山岳警備隊 [山の本、TVなどメディア関係]



 緊急事態宣言が出て「やっぱり無理しないほうがいいよな」となって、連休に入ったというのに家でぐずぐずとしています。家族も行くところがなくて、久しぶりに家族全員が揃って、楽しくはあります。

 さてYoutubeも山岳関係でもいろんなジャンルが出ています。クライミング、沢登り、バックカントリーなどなど。見だすと本当にあっという間に時間が経ってしまいます。

 そんな中でも富山県警山岳警備隊のこの動画は、緊迫感もあるし、色々と考えさせられる動画でした。今年3月、黒部横断をした2人パーティーが3日間停滞した後の好天を捉えて劔岳登頂を果たし、馬場島に下山している時、東大谷側に滑落してしまったのです。

 ヘリコプター2機で向かい、同行者をまずは救助。滑落した本人は当初動かず安否が気遣われます。現地に降り立つと右半身が埋まってしまい身動き取れないものの、応答できます。そして腰の痛みを訴えます。手際よくヘリコプターに収容してこと無きを得るのですが。ハイマツに足を取られて滑落したとのこと。

 生還できた話ばかり絵はないでしょうが、こうした動画の公開は遭難防止の観点から有効だなあと思った次第です。


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立山ハンノキ滝単独初登攀 見逃してしまった… [山の本、TVなどメディア関係]

 NHK-BS4Kの「日本一の氷瀑に挑む「立山連峰ハンノキ滝 単独初登攀の記録」」を見逃してしまった。

 どこでこの記録を見たのかしら?山と渓谷社のクライミングネットかな?その記事によると

2021年2月12日~15日、富山・立山連峰にあるハンノキ滝を門田ギハードが冬季単独初登した。出現している間は称名滝をしのぐ落差500メートルの巨爆。冬季初登は2014年2月8日~11日、藤巻浩氏、宮城公博氏のペア。


 最近、渓谷登攀の記録が多くなっているようですね。

 4Kは再放送が多いから気長に待ちます。BSでもそのうちやってくれるでしょう。

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「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」驚きはしなかったけど… [山の本、TVなどメディア関係]

 「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」を読みました。北海道のテレビ局社員の河野啓さんが書いたものです。河野さんは栗城さんの番組を何本か制作しました。いわば栗城さんを世の中に紹介した立役者といった人物です。

 やっぱりそうか、という内容でした。方々でハレーションを起こしながらも、なぜか憎めない奴という人物像も想像通り。しかし活動の肥大化が命を縮める結果を招いてしまった経緯も「ある程度まで」は想像通り。
 なぜ止められなかったのか、との問いに、多くの関係者が「言っても彼はいうことを聞かない」と答えています。結局栗城さんが腹を割って話せる人がいなかったのですね。

 この本は良くも悪くも話題となっているようで、その中でメディアの責任の有無が取りざたされています。登山専門誌は山岳界からの冷静な目線で論評をするべきだったとか(山と渓谷は一度、単独無酸素を「その言葉に値しない」と評したそうです)、テレビやインターネットは「七大陸単独無酸素」という無責任なキャッチフレーズを真に受けるべきではなかったとか、繰り返される計画の杜撰さからも紹介するに値するものかどうか判断できたはずだとか。

 安易に「ヒーロー」を作り出す部分はマスメディアの典型的なところで反省すべき点です(山岳番組で実績のあるNHKが取り上げたのは謎ですけど)。しかし批判=個人攻撃をマスメディアがどこまでできるのでしょうか?政治家などは公人としてその対象になるでしょうが、栗城さんは公人とまで言えるのでしょうか?直接的に被害を被ったような声は聞きません。マスメディアが個人攻撃をしたらしたで怖いような気もします。

 テレビに出るような人の経歴詐称が時々明るみに出ることがありますが、メディアの取材活動も本人からの申告が基本となっているのだと思います。複数でウラを取るのが基本だといっても実際のところは限界があるのではと思います。

 特に最近はSNSで本人が直接発信できるようになり、情報は凄まじい量になっています。知らず知らずのうちに情報が一人歩きして、誤った言論や行動に繋がる事例は珍しくなくなりました。
 特にSNS×メディアの相乗効果は、時に発信した自分たちでさえ想像できないほどの反響を呼ぶことがあり、一旦流れができてしまうと誰も収拾をつけられなくなると思います。

 栗城さんが話題となっていた頃のことを思い返すと、インターネット上では栗城さんの擁護派と批判派がいつも互いを攻撃し応酬していました。そしてそれなりの数の人が栗城さんの活動で元気づけられたと言っていたように思います。それはそれで誰もできないことをしていて、私は「一方的に批判はできないな」と思っていました。

 広告塔として利用したスポンサー、ブームに乗っかったメディア、それにSNSの拡散力が加わり「栗城史多」という偶像を作り上げてしまった。こうした流れをどうやったら止めることができたのでしょうか?
 できるかどうかは別として、この流れを止められるのは、やはり本人しかいなかったのではないかと私は思いました。

 いろんな受け止め方があると思います。色々考えさせられる本でした。

■関連エントリー
NHK「7サミット 極限への挑戦」を見た
栗城史多さんのエベレストとイモトさんのマッキンリーをみました
栗城史多さん 亡くなるとやはり寂しい


デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)

デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)

  • 作者: 河野啓
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/11/26
  • メディア: Kindle版



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ダグ・スコット逝去「ヒマラヤン・クライマー」憧れのクライマーでした [山の本、TVなどメディア関係]

ダグ・スコットのヒマラヤン・クライマー

 イギリスのクライマー、ダグ・スコット氏が2020年12月7日に亡くなったそうです。1975年クリス・ボニントン隊に参加。エヴェレスト南西壁をドゥーガル・ハストンと初登攀し、登頂後8750m地点でビヴァーグした話は特に有名でしょう。

 私にとっては「ヒマラヤン・クライマー 世界の山岳探求に捧げた半生」という写真集が思い出深いです。山岳関係の写真集で持っているものはこの1冊だけです。

 先ほどのエヴェレスト南西壁では頂上での「沈む太陽を背にしたハストン」が好きです。世界のてっぺんに立ち、山々や雲がわいているのを眼下にして眺めている。日暮れ時の光線とハストンのシルエットがとても感慨深い一枚です。

 緊張感のあるクライミングシーンはもちろん、その土地にすむ人たちを優しく描いています。丸眼鏡に長髪というヒッピーのような風貌はその人柄をよく表していると思えました。憧れの人です。

 写真集なのに読むところが非常に多いのも好きなところです。それも平易な文章で楽しく読める。原文が優れているのだろうと思います。

 ご冥福をお祈りします。

裏表紙を開けたカバー部分に収録の山行がリストアップされていました。

1965年 ティベスティ山群 タルソ・ティエロコ初登攀
1966年 クルディスタン シロ・ダー
1967年 コー・イ・バンダカー南壁初登攀
1969年 ストローン・ウラディール ザ・スクープ初登攀
1969年 チマ・オヴェレスト バウアー/ルドルフ・ルート
1971年 エル・キャピタン サラテ・ウォール
1972年 エヴェレスト南西壁
1972年 バフィン島 アスガード東ピラー初登攀
1974年 レーニン峰 南東側稜初登攀
1974年 ガルワール・ヒマラヤ チャンガバン初登攀
1975年 エヴェレスト南西壁初登攀
1976年 アラスカ マッキンリー南壁初登攀
1976年 マウント・ケニア 東壁ダイレクト・ルート初登攀
1977年 カラコルム オーガ初登攀
1978、80、83、87年 K2への挑戦
1978年 カナダ マウント・ウォディントン
1979年 カンチェンジュンガ北稜初登攀
1979年 ネパール クスム・カングル北稜初登攀
1979年 ネパール ヌプツェ北壁初登攀
1980年 カンチュンツェとマカルー
1981年 ガルワール・ヒマラヤ シヴリン東稜初登攀
1982年 チベット シシャパンマ南西壁初登攀
1983年 カラコルム ロブサン・スパイアー初登攀 ブロードピーク
1984年 ネパール バルンツェ チャムラン東峰初登攀
1984年 マカルー南東稜
1986年 カナダ マウント・カーネル・フォスター南西壁初登攀
1987年 エヴェレスト北東稜 
1987年 ブータン ジチュダケ初登攀
1989年 東部カラコルム リモ山群


ヒマラヤン・クライマー―世界の山岳探求に捧げた半生

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  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2020/12/28
  • メディア: 大型本



ビヨンド・リスクにもインタビューが載っていました。


ヤマケイ文庫 ビヨンド・リスク

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  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2018/08/04
  • メディア: Kindle版



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奥穂高から涸沢滑降 元日本代表の荻原次晴さん [山の本、TVなどメディア関係]

 BSにはNHKやBSフジなど多くの山番組があります。大体が日本百名山を登るもので、正直言ってあまり意識したことがなかったのですが、たまたまTVを見ていたら、涸沢から残雪期の穂高を見上げている荻原次晴さんを見つけ「これはもしかしたら?」と思ったのです。

https://www.bs-tbs.co.jp/meihou/archive/20140531.shtml

 荻原さんといえば双子の兄の健司さんとともに、ノルディック複合の日本代表として長野五輪で入賞するなど大活躍した選手ですね。かつて民放の番組に出た時には、兄の健司さんへの競争心、劣等感など複雑なトップアスリートの感情を涙ながらに話していましたっけ。

 さてザイテングラードの左側の斜面を登り切って奥穂高山頂へのアタックを終えると、翌日に涸沢を滑降します。さすがに余裕で滑っていました。気持ちよく、雪を楽しむように。
 モルゲンロートに染まる穂高連峰を見上げている時、選手生活の中ではあまり山をじっくり見上げることはしなかったとのこと。大自然の斜面を滑るのは、あまり経験がなかったのかもしれませんね。

 涸沢のスキーって話には聞いていましたが、映像として見るのは初めてかもしれません。頑張ればいつか私も滑ることができるかもしれないと思いましたが、核心は涸沢までスキー板を持ち上げることでしょうね(^ ^)



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  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2018/12/05
  • メディア: 単行本



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情熱大陸「平出和也」来年狙うK2の未踏ルート [山の本、TVなどメディア関係]

 6/14に放送された情熱大陸「平出和也〜世界最強のクライマーが、前人未踏のルートを切り拓く」を見ました。

 最近ずっとパートナーとなっている中島健郎さんとパキスタン・カラコルムのラカポシ南壁を新ルートから登頂しています。Rock&Snow085によると、BC(3660m)入りが6/16。高所順応をへて、6/27BCを出発し、7/2に登頂しています。

 シスパーレの登攀でピオレドールに輝いた二人のクライマーは、どちらも撮影することができるのが素晴らしいですね。これまで山岳の撮影といえばNHKの山岳班の独壇場でしたが、2人はアクションカメラ(GoProなど)とドローンを駆使します。ラカポシの頂上でドローンを飛ばすのですから、笑うしかないですよね。映像への執着心がすごいです。

 さて近況は新型コロナウイルスの影響で自宅でトレーニングする2人ですが、来年6月にK2に再挑戦するそうです。平出さんは最近の山行では体力の衰えを感じることが多くなったと吐露しますが、「まだ終われない」とも話していました。

 平出さんは現在41歳。これほど登山に打ち込んでいる人でも体力の衰えを感じているとは辛い現実です。極限の状況では一瞬のミスが生死を分けるということなんでしょう。
 好きなことを続けるのは、他人が思うほど簡単なことではない。

 一方で中島健郎さんは「技術や体力で山は登れない。パートナーが大事」という旨の話をしていました。高いレベルでお互いを信頼できるパートナーを得ることができたのは奇跡とも言えると思います。

 オンラインでの打ち合わせ風景で平出さんがスマホを見ていました。K2の北西稜と西稜の間に挟まれた部分、西壁がアップで映し出されていました。かつてクルティカが何度も挑戦したルートでしょうか。世界最強、否、お互いを信頼しているペアの挑戦を見守りたいと思います。

演出:和田萌
撮影:中島健郎、倉渕宏幸
プロデューサー:中村卓也、重乃康紀
制作協力:オルタスジャパン


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フリークライマー杉野保さんが亡くなったのを初めて知った [山の本、TVなどメディア関係]

 フリークライマーの杉野保さんが亡くなったのをRock&Snow088(2020夏)で初めて知りました。2020年3月5日。城ヶ崎の「おとじろう」と呼ばれる岩場で、偵察中に強風か高波によって墜落したと思われるとのこと。

 私が雑誌「岩と雪」を初めて買ったのは1988年ですが、杉野さんはこの頃にはすでにクロニクルの常連でした。例えば城ヶ崎のシンデレラ・ボーイ(5.13b)の再登情報には「これまでの成功は初登の大岩純一以下、平山裕示、杉野保、矢島隆明、保科雅則である」とあります。(岩と雪133号)実に懐かしく錚々たるメンバーです。

 クライミングシューズの履き比べの企画で杉野さんの顔写真が出ていて、いかにも穏やかそうな人なのが、妙に印象深いです。(岩と雪126、162号)
 1989年6月の日本フリークライミング協会の設立時の理事の中に名前を連ねていたり、コンペでも第2回フリークライミング選手権大倉カップで5位(岩と雪142号)、ジャパンカップで3位(岩と雪144号)など要所では必ず名前があったものの、当時はアクの強いクライマーが多かったためか(笑)露出という面では目立つ存在とは言えなかったと思います。

 杉野さんの文章がまとまった形で出たのは岩と雪148〜151号で連載された「アメリカにボルトを探して」だと思います。①ケイブ・ロック、②スミスロック&レッドロックス、③アメリカン・フォーク・キャニオン、④ヨセミテの計四回の連載です。

 正直なところ岩場の紹介なのか紀行なのかちょっと中途半端な感じの文章なのですが、最後のヨセミテが面白かったです。ヨセミテにもボルトルートがどんどんできていた時代。杉野さんたちが行くと、なるほど多くのボルトルートがありました。しかし小さな岩場に無理矢理拓かれたルートを登っていて杉野さんは物足りなさといけないことをしているように感じます。

 パートナーが入れ替わって、杉野さんはロストラム・ルーフの新しいクラック・ルート「エクセレント・アドベンチャー」(5.13bピーター・クロフト初登)に挑みます。全長50メートル。ボルトルートではありえないプロテクションの数、残置されたアングル・ピトン。ルーフを前にして気が重くなったり、ロープの流れが悪くなったり。そして…

 「落ちた落ちた。ルーフの下までぶっ飛んだ。ハーネスを支点にして、体が弓ぞってしまうフォールをしたなんていうのは久しぶりのことだ」

 思いがけずクラック・ルートで楽しむことができた杉野さんは「その岩場にはそこでしか通用しない楽しみ方があり、そしてそれに伴うモラルがある」とし、各地のクライミングエリアで起きている軋轢の解決への方向性を示してみます。

 2003年から始まった「OLD BUT GOLD」は各地のルートを訪ね挑戦していくもので大変好きなコーナーでしたが、今回再発見したヨセミテの文章にはその後の杉野さんの立ち位置表明のような、誰もが認める文章であり、クライミングに対する姿勢だったような気がします。

 享年55歳。今回のRock&Snowに寄せられた追悼の多くの文章に、杉野さんの器の大きさが伺えるように思えます。ご冥福をお祈りいたします。


ROCK & SNOW 088

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  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2020/06/08
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