クワウンナイ川5 ヒサゴ沼から天人峡へ下山 [北海道・クワウンナイ川 2008夏]
きのうの疲れがあるのか、さすがにぐっすり寝た。小屋泊まりはあまり経験がなかったのだが、割とよいもんだなと思った。皆さんマナーも良いし、大人な感じが好ましかった。また小屋のトイレは使用済みの紙を持ち帰るよう呼び掛けていた。シーズン終わりで糞尿を回収する際に、トイレットペーパーは大きな障害になるとのこと。環境について利用者への負担もだいぶ受け入れられてきた証拠だろうか。
午前3時にはみんな朝飯を作り出したので、僕らも4時には起きて、ラーメンを食べる。小屋を出ると朝焼け。
ヒサゴ沼の向こうに望まれる山は、地図によると東大雪のニペソツ山だそうだ。
午前5時10分に小屋を出て化雲岳へ。「カウンのへそ」と呼ばれる通り大岩が目印だ。
昨日のトムラウシ山もはるかかなたに見えました。
化雲岳からは尾根伝いの道を行きますが、風をよけるところもなく、結構つらかったです。
小化雲岳を過ぎたころから、道も悪くなり、ハイ松の中を漕いだり、ぬかるんでいたりしています。ここはもう少しなんとか整備できないものかと思います。第2森林公園がどこなのかさっぱりわからないまま、ずんずん歩いて行くと、突如木道が現れ、やれやれと思っていると、思ってもいなかった風景が眼前に広がりました。
草原の向こうに旭岳がずんと居座っています。これまでで見た旭岳で一等よかった。この風景が第1森林公園というところらしいです。ここまで来ると羽衣の滝を見て天人峡温泉へはもう少しです。
クワウンナイ川は北海道を代表する沢であることは間違いない。では関西からわざわざ行くほどの沢かと言われれば、暇と金がかかるだけに?だ。でも心はすっきりしました。この目で見たかった。クラシックルートの課題をひとつクリアできたのがうれしかった。
でもきっと学生時代に行っていれば、もっと心深くクワウンナイ川を登ることができたに違いない。それがちょっと寂しいような気がします。
◆1日目:入山(10:00/16:10)カウン沢出合 2008/8/22
◆2日目:カウン沢出合(5:30/11:50)縦走路(12:05/13:20)トムラウシ(13:40/16:10)ヒサゴ沼避難小屋
◆3日目:ヒサゴ沼避難小屋(5:10/11:50)天人峡温泉
クワウンナイ川4 トムラウシ山でへばりました [北海道・クワウンナイ川 2008夏]
クワウンナイ川の遡行を終え、第2の目標はトムラウシ山への往復です。トムラウシは日本百名山にも選ばれている北海道を代表する、しかしなんとなく最果ての土地の山という感じがします。この機会を逃すと二度と行く機会はない!断言できます!
南アルプスの北岳を登るならバットレスから登るのが最もふさわしい(と思う)ように、トムラウシを登るならクワウンナイ川を経て登るのが最もふさわしいでしょう。山にはそれぞれ、その山に合った「ふさわしいルート」を備えていると思うのです。
パートナーはもう疲れてトムラウシをあきらめ、きょうの幕営地のヒサゴ沼を目指すとのこと。僕は気合を入れて、単独でトムラウシをピストンすることにしました。ナップサックに水と行動食とカメラを入れて出発。クワウンナイ川から上がった縦走路から見えるピークがトムラウシだと思っていたのですが、なんのことはない、だらだらとしたピークを何回も越えていきます。北沼に着いてようやくトムラウシのピークが近づきました。でもロックガーデンは岩の上を乗り越えていくので、疲れた体にはつらいです。
ようやくトムラウシのピークに立ちました。体力の消耗が激しくて、行動食のチョコレートやビスケットを貪り食います。こんなに夢中でメシを食ったのはいつ以来だろう?身体が栄養を欲しているのを感じます。「ウオー」と叫ぶ。「野生」一歩手前の心境です。
人心地着いてまわりを見回す余裕ができました。誰もいないピーク。北海道の見知らぬ山々が雲の上に浮かんでいます。40歳を超えてこんなに遠くの山に来るとは夢にも思わなかった。僕はよくやってる方なのか、たいしたことないのか、なぜ登ってるのか・・・
北沼越しに旭岳がはるかかなたに見えました。ここから元来た道を戻ります。天池を越えて、ヒサゴ沼への分岐点でほっとしたのもつかの間、雪渓のくだりに不安になりました。ここは道がわかりにくかった。湖畔沿いに歩くとヒサゴ沼避難小屋に着きました。
パートナーは小屋の中でグーグーいびきをかいていました。僕もあまりの疲れに何もする気がわきません。こんなに疲れたから時間がたつにつれて、うれしさがジワジワとこみあげてくる。我ながら「やっぱりMだなあ」と思う。
◆1日目:入山(10:00/16:10)カウン沢出合 2008/8/22
◆2日目:カウン沢出合(5:30/11:50)縦走路(12:05/13:20)トムラウシ(13:40/16:10)ヒサゴ沼避難小屋
◆ヒサゴ沼避難小屋(5:10/11:50)天人峡温泉
クワウンナイ川3 雄大な源頭部・・・だけど、しんどかった! [北海道・クワウンナイ川 2008夏]
ナメが2キロは続いた感激の「滝の瀬十三丁」が終わり、クワウンナイ川は徐々に源頭部の雰囲気です。まずは「ハング状の滝」。ここは右岸を巻きますが、4m程の壁あり。フィックスロープがあり、簡単でした。
そして、奥の二股を左へ。2段の滝となっています。
二股中間の尾根につけられた踏み跡をたどると、滝の落ち口近くによさげなテン場がありました。最後は「スダレ状の滝」です。
滝の上に登り振り返ると・・・たおやかな大雪の稜線が望まれました。涼やかな風が心の中までしみわたる、そんな感じでした。
いよいよ水量もすくなってきます。
尾根歩きに備え水筒に水を汲んで谷を歩いていると、だんだんと流れさえもなくなり、丘を越えると目の前に雄大な風景が広がりました。
足元には数々の花々が・・・すでに盛りを過ぎたのでしょうが、とても可愛い花々です。耳を澄ますと「チッチッ」とナキウサギが鳴いています。
しかしここから遠かった!草原のあとは、累々と重なる岩の上を歩いたりしながら、踏み跡を外さないように気をつけ、雪渓が残る池で小休止をとって、約1時間半でようやく縦走路に着きました。トムラウシ往復のタイムリミットもクリアしています。疲労ぎみのパートナーは直接ヒサゴ沼へ行くと言い、私は貧乏症なので「せっかくここまで来たのだから」と単独でトムラウシ往復を決意します。たぶん、この時点で私も大分体力を消耗していたのでしょうね・・・
◆1日目:入山(10:00/16:10)カウン沢出合 2008/8/22
◆2日目:カウン沢出合(5:30/11:50)縦走路(12:05/13:20)トムラウシ(13:40/16:10)ヒサゴ沼避難小屋
◆ヒサゴ沼避難小屋(5:10/11:50)天人峡温泉
クワウンナイ川2 これが「滝の瀬十三丁」だぁ! [北海道・クワウンナイ川 2008夏]
カウン沢出合から間もなく、クランク状の奥に巨大な滝が見えました。魚止の滝です。想像していたより、ずっと大きかったです。右岸は絶壁となっていて、何十羽もの燕が飛び交います。巻き道は左岸に明瞭です。
そして、続いてF2
ここは右岸を巻きます。
そうすると遂に現われました。「滝の瀬十三丁」と呼ばれる2キロにも及ぶと言われるナメがこれだ。
吠えました一枚岩の岩盤の上を流れる水は、とても穏やかに見えますが、ジャブジャブと音を立て力強さに圧倒されそうなほどです。でもナメには、黒い苔が生えていて、良いフリクションとなってくれました。
そこから先は・・・
この2キロほどにいろんな要素が詰まった、さすが「日本百名谷」に選ばれただけはあるのです。
そして滝の瀬十三丁はこの滝で終了しました。
ほんの1時間ほどでしょうか?もうお腹いっぱいです。でもこれから先、クワウンナイ川は次の表情を見せてくれます。続く
◆1日目:入山(10:00/16:10)カウン沢出合 2008/8/22
◆2日目:カウン沢出合(5:30/11:50)縦走路(12:05/13:20)トムラウシ(13:40/16:10)ヒサゴ沼避難小屋
◆3日目:ヒサゴ沼避難小屋(5:10/11:50)天人峡温泉
憧れのクワウンナイ川を遡行する2008年8月 [北海道・クワウンナイ川 2008夏]
「今年はまだクマは出てないけどね。初めての北海道の山がクワウンナイってハードだね」
旭川空港に予約しておいたタクシーの運転手さんはのんびりした口調で、車窓から広大な風景を眺めている僕らに話しかけた。そして、ここ数日雨が降っていないこと。きのう北海道で最低気温が5度くらいまで冷え込んだことを話している。「オホーツク高気圧が張り出しているので、2日間は大丈夫」と信じてはるばる大阪から北海道まで来たんだ。大雪山の上の方は雲がかかっているが、とりあえずお天気は上々。
タクシーは羽衣トンネルを出て清流橋を渡ったところにある駐車場で停まった。飛行機の持ち込みが禁止されているガスコンロのカートリッジをタクシー会社に頼んでいたのだが、見たこともないミニサイズ。ちょっと失敗だ。ザックを背負い、クワウンナイ川右岸につけられた林道を歩きだした。そしておよそ15分後、憧れのクワウンナイ川との対面。支流のポンクワウンナイ川との出合、ここから遡行が始まりました。
涼しいし、明るいし、樹林がきれい・・・上信越の沢をちょっと思い出した。心配した渡渉も膝下くらいの深さで、問題なし。やがて函となった。
右岸につけられた巻き道を行く。それからは延々の川原歩き。高度計をにらみながら、もうそろそろという頃、左手から沢が入り、左岸から煙が見えた。カウン沢の出合です。すでに3人パーティーが焚き火を囲んでいました。僕らもテントを張って、さっそく川虫を餌に釣りをすると、すぐにオショロコマが釣れた。人ずれしていないんだなあ。北海道を実感
塩を忘れたのですが、さっそく焚き火の遠火であぶると、燻製のように焼けました。素晴らしくおいしかった。なんだろう?木の香りでしょうか?山の恵みにただ感謝するばかりです!あっという間に日が暮れて、パートナーはすでにいびきをかいています。ウイスキーでちびちびやりながら焚き火を見ていると、あ~なんて贅沢な時間なんでしょう・・・きのうまで会社でいたことが、ウソのようです。これだけでも来てよかったぁ~。
◆1日目:入山(10:00/16:10)カウン沢出合 2008/8/22
◆2日目:カウン沢出合(5:30/11:50)縦走路(12:05/13:20)トムラウシ(13:40/16:10)ヒサゴ沼避難小屋
◆3日目:ヒサゴ沼避難小屋(5:10/11:50)天人峡温泉