ピオレドール賞を3度も受賞したアルパインクライマー平出和也さんのドキュメンタリーを見ました。再放送分を録画していたものです。しばらく活動を聞かないなあと思っていました。わたし自身が山のクロニクルに疎くなったからかもしれませんけど…

 K2西壁の挑戦を目指し、そのステップとして2021年12月にカラコルムのカールンコー(6,977m)北西壁を三戸呂拓也さんと登るものの足に凍傷を負って敗退します。3本の指先を3ミリほど欠落する程度で「済んだ」そうです。

 番組では「登山家の43歳の壁」をキーワードとして呈示しています。植村直己、谷口けい、長谷川恒男…
 K2挑戦は当初2021年の予定でした。体力の衰えも感じる中、平出さんは「冒険家としては40歳前後が一番強いと思っている中で、この2年コロナで全く冒険ができていない。山は待ってくれると言う人はいるが、山は待ってくれない」と話します。
 平出さんは2019年のラカポシ南壁の様子を収めた「情熱大陸」でも体力の衰えを感じていると話していました

 作家の角幡唯介は「(43歳は)経験の拡大に肉体が追いつかなくなり始める年齢である」と著書で述べています。
 さらにインタビューで「経験値が高まっている分いろんなことができるって思うし、しかし(残りの)20年じゃできない。どうしても焦りが出てきて無理な行動につながる。相当なことをやりたいのとその先が短いんじゃないかという焦りとの葛藤がある時期」と分析します。

 平出さんは中島健郎さんと2022年9月にカールンコーに再挑戦します。3日をかけて北西壁を新ルートで攻略しました。2人の映像がふんだんに使われていてクライミングシーンはとても迫力がありました。平出さんは、かつての自分より足取りは重くなっているのを自覚しながら、それを受け入れているようでした。なかなか良いドキュメンタリーです。さてK2には挑戦するのでしょうか?

 自分の登山歴を振り返ると、40歳でアルプスでの岩登りを再開していました。43歳は北アルプスの岩稜ルートに行ったり、年末年始の八ヶ岳を登ったりしていました。
 それ以前の怠惰な生活で自分の体力、技術ともに底辺だったために「無理をする」どころではなかったのですが、「焦り」は感じていたと思います。
 加齢とともに思うのは「山は待ってくれない」です。そういう意味では、今の方が「無理をする」タイミングなのかなと自戒を込めて思う次第です。気をつけよう。

【平出和也 未踏峰未踏ルート】番組の調べより
2003 クーラ・カンリ東峰 7,381m
2004 ゴールデン・ピラー北西稜 7,027m
   ライラピーク東壁 6,096m
   ドルクソム・スターグ 6,355m
2005 シブリン北壁 6,543m
2008 カメット南東壁 7,756m
2011 ナムナニ南西稜 7,694m
2016 ルンポカンリ北壁 7,095m
2017 シスパーレ北東壁 7,611m
2019 ラカポシ南壁 7,788m