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「垂直の星 吉尾弘遺稿集」を読んだ [山の本、TVなどメディア関係]

 吉尾弘さんといえば、1957年3月の「一ノ倉沢滝沢本谷積雪期初登攀」がなんといっても有名です。このクライミングについて古川純一さんは「真に(一ノ倉沢の)内院の20年間の空白を破った」クライミングで「日本の登山界始まって以来の大衝撃事件」だと序文で称賛しています。当時吉尾さんは19歳。

 その滝谷登攀は原田輝一さんがパートナーなのですが、文章からは極度の緊張感から来る焦燥感が感じられます。それがパートナーの原田さんへのいら立ちとなります。

 吉尾さんは「付記」にこの登攀後、原田さん(3年後遭難死)と再びザイルを組まなかったことについて「滝沢という舞台で垣間見た人間の持つエゴイズムと、山の中の二人だけの世界における人間の底なしの欲望と恐怖にゆさぶられた感情が、あまりにも生々しく思い出されて、滝沢と聞くと羞恥の念とほろ苦さを覚える」と書いています。

 その後はRCCⅡの創立に加わった後、日本勤労者山岳連盟の会長に就任しました。「弱者に注ぐ視点と生命尊重論」(柏瀬祐之)が随所に出てきます。大衆運動の盛り上がりが感じられるのも昭和まででしょうか…

 「クライミングジャーナル創刊号」(1982年4月)に収められたという檜谷清さんとの「ハードフリー(懐かしい言葉!)談義は非常に盛り上がったようで、トレーニングの必要性や冬の登攀には「ハードフリー」が必要だとする考えを示していました。

 トップクライマーなのに偉そうにせず、とにかく吉尾さんの優しいお人柄が偲ばれる遺稿集です。


垂直の星―吉尾弘遺稿集

垂直の星―吉尾弘遺稿集

  • 作者: 吉尾 弘
  • 出版社/メーカー: 本の泉社
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 単行本



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