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甲武信ヶ岳と千曲川信濃川水源地 [東京での登山と日常]

 8月に笛吹川遡行後に甲武信(こぶし)ヶ岳の頂上を目指しましたが天候不良で引き返し、それ以来課題となっていました。今回は一般ルートからです。東京からとなるとJR塩山からバスに乗って西沢渓谷ということになります。9時半過ぎに到着し、さっそく山の中へ。西沢山荘手前の徳ちゃん新道に入ると、ずっと急登が続きます。

徳ちゃん新道を登ると富士山が見えた

 ようやくのこと木賊山(とくさやま)に登るとやっと甲武信ヶ岳が見えました。奥深いところにあるんだなあ。信州と甲州と武蔵の国境にある山。荒川と笛吹川(富士川)、そして信濃川の源流がここにあります。

木賊山の下から甲武信ヶ岳が見えた

 甲武信ヶ岳に登ると秩父の山々が見えます。左から国師ヶ岳、金峰山、小川山が見えます。その向こうにはアルプスの山々も。

秩父の山々。左から国師ヶ岳、金峰山、小川山

 今日の宿泊は甲武信小屋でテント泊です。

甲武信小屋のテント場

 ジフィーズを食べて、ピーナッツをつまみにお酒を飲んでいたら、眠たくなって早々にシュラフに入りました。すると案の定夜中に起きてしまって、用を足そうと外に出ると満点の星空です。せっかくなのでカメラを15分置いて、ライブコンポジットというモードで撮影してみました。

空は満点の星。15分置いてみた

 星を見ていると自転している感覚が不思議に湧いてきて、何万年も何億年も前から、大きな大きなからくり時計が繰り返しこの星空を動かしている、そしてその中の自分という存在に気づかされます。

 撮影している頃はそうでもなかったのですが、その後急激に寒くなってきて、眠れなくなりました。結局4時に起きて焼きそばを食べてコーヒーを飲んでオレンジを食べてテントをたたんで5時半に出発。

夜明けは6時前

 甲武信ヶ岳にもう一度登って夜明けを頂上で迎えます。ご来光を見にきた多くの人を頂上に残して、私は毛木平へ向けて斜面を下り始めました。分岐を右にとってしばらく行くと大きなポールがありました。ここが千曲川信濃川水源地標です。

千曲川信濃川水源地標

 ここから湧出した水が千曲川となり、日本一の大河、信濃川となって日本海に注ぐのです。

湧き水だ。これが信濃川の最初の滴り

 この道は苔に覆われた瑞々しい風景が続きます。シラビソ、ダケカンバなどの森林と、すでに力強く流れを増している千曲川が心を穏やかにさせてくれます。登りもきつくなく、時間があってアプローチできるならこの信州側から登るのが一番いいでしょうね。

紅葉

 やがて毛木平に着いて、バス停のある梓山まで1時間歩きます。高原野菜マークの白菜の畑が広がります。雄大な景色でちょっと北海道のようです。開拓の碑がありましたから、先人が苦労して開拓した土地なのでしょう。梓山バス停には9時45分ごろに着いて、10時17分信濃川上駅へのバスに乗り込みました。

梓山への道。高原野菜の白菜畑。雄大な夕景が続く

■甲武信ヶ岳 2022/10/22-23
1.西沢渓谷(9:40/14:00)甲武信小屋(14:40/14:50)甲武信ヶ岳(15:10/15:20)甲武信小屋
2.甲武信小屋(5:30/6:25)千曲川信濃川水源地標(6:30/8:50)毛木平(8:55/9:45)梓山


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安達太良山を登り「智恵子抄」を読んでみました [東京での登山と日常]

 3週連続の東北。体力、気力的にもちょっとしんどい。お財布的にも…。ということで南東北の福島の安達太良山にした次第です。さて新幹線で郡山下車、東北本線に乗り換えて二本松まで。この時期は奥岳登山口までシャトルバスが出ています。バスの列に並ぶのが一瞬遅れ、立ち客となりました(泣)

 奥岳登山口はあだたら山ロープウェイがあるところです。バスの乗客はほとんどがロープウェイ組でした。スキー場の右手の林道から登山道に入って行きます。やがて五葉松平経由安達太良山への道を分けて、勢至平を目指します。

 馬車道という広い道もありますが、旧道を選んでショートカットを目論みます。しかしこの道が粘土質の水たまりがいっぱいあるようなぬかるんだ道で、案の定転んでしまいました。いきなりドロドロだぁ〜。あとで時間的にはあまり変わらないと聞きました。しょんぼり。

勢至平からの紅葉

 勢至平に着くと平坦な道が続きます。やがて鉄山の岸壁と紅葉が見えてきました。曇っているのが残念ですが、それでもそれが素晴らしい紅葉とわかります。何枚も写真を撮ってしまいました。

くろがね小屋

 くろがね小屋では大勢の人に混じり、かわいらしい女性をリポーターにした撮影スタッフがいました。いつか放映されるのでしょうね。どこの局だろう?
 この辺りは硫黄の匂いがしますね。くろがね小屋は温泉に入ることができ、とても人気がある小屋です。予約も大変だと聞いたことがあります。

「乳首」がちらっと見えた

 さて私は峰の辻目指してザレた登山道を登ります。その手前から安達太良の「乳首」がちらっと見えました。でもそれは一瞬ですぐにガスに巻かれて見えなくなりました。ガスの中を登るにつれて霧雨のような細かい雨が降ってきました。

 沼ノ平の爆裂口を見るのが楽しみだったのですが、ガスで全く展望は利かず、風も吹きまくって寒い。さっさと頂上を目指すことにします。

安達太良山 すごい人だ

 すぐに頂上直下に着きましたが、さすが日本百名山だけあって大勢の人がいます。100人は余裕でいたのではないでしょうか?「乳首」に上がるには一方通行の道があってちょっとした岩場を登ればすぐです。時折下の方が見える時もありました。ぱっぱと写真をとって下山に取り掛かることにしました。

ちょっとだけ青空

 下山はロープウェーの山頂駅を目指しますが、思ったより時間に余裕があるので、そのまま登山口まで徒歩で下山することにしました。上りの渋滞の列ができています。クラブ〇〇〇ズムのツアー客です。すごい数です。ガイドさんも大変だなあと思います。こちらも思うように進めません。まあ我慢するしかないですね。

展望台から見える稜線

 薬師岳の展望台に着く頃には、なんと山頂がバッチリ見えまいた。上の写真の一番左が安達太良山、別名乳首山です。ガスはどこへ…。まあいいや、それにしても紅葉がきれいだ。晴れていればなあ。

この上の空がほんとの空です

 この展望台には「この上の空がほんとの空です」との標識があります。智恵子だけでなく、全ての人が「ほんとの空」を求める気持ちがあるのでしょう。

色づく葉っぱ

 下山後は奥岳の湯で汗を流し、缶ビールを飲んで15時半のバスで帰路につきました。

 実家の母親に「安達太良山に行ってきた」と話すと「あー、ほんとの空、智恵子の…」と言って、顔がほころんだような気がしました。そういえば読んでことがなかったな。青空文庫に「智恵子抄」がありました。読み始めると止まらなくなりました。こんな女性がいるのかと思うほど、純潔さを持って、子供のようでいて、しかし激しさを胸に秘め、夫の芸術作品の最大の理解者だった智恵子。しかしやがて精神が侵されていきました。「智恵子抄」は高村光太郎がその時々の愛おしい想いを包み隠さず書き留めていたものです。
 「東京には空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ。」という詩「あどけない話」だけではありませんでした。「レモン哀歌」「梅酒」「荒涼たる帰宅」。今回全編読んでよかったと思いました。本当によかった。

■安達太良山 (2022/10/8)
奥岳登山口(9:05/11:35)安達太良山(11:55/13:45)奥岳登山口


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岩手山 「南部片富士」で日帰り登山、お風呂、盛岡冷麺 [東京での登山と日常]

 前週に続いて東北の山へ。紅葉の頃に東北の山に登りたいと思っていたのです。ですが休みとお天気、私的な行事のタイミングが合いません。とんぼ返りの山行となりますが「東京勤務のうちに」と夜行バスに乗って盛岡へ。
 盛岡には朝の5時20分ごろに着いて42分のいわて銀河鉄道に乗り換えて滝沢まで。車中から見える岩手山は「南部片富士」の名前通り、左側が削げていて荒々しさを感じます。そこで他の登山客とタクシーを相乗りして(3500円)馬返しの登山口へ。すでに駐車場は満車に近かったです。

馬返し 水場もトイレもある

 馬返しの登山口にはトイレがあって、水場はジャバジャバ水が出ていました。そこから樹林の中の道に入って行きます。途中から旧道と新道に別れますが、ここは新道を選びます。だいたい山で新道と言うと踏み固められていないやや無理に作った道が多いのですが、ここはそうでもありません。

¥右は早池峰山

 この日はよく晴れました。右側の高い山は早池峰山とのことです。旧道を歩く登山者が見えます。あとで旧道を歩いた人に聞くと遮る樹林がないので照り返しが強かったとのことでした。

旧道を行く登山者が見える「

 急登を登り終えると平らな道になりました。やがて八合目の避難小屋につきました。トイレもあります。中は見ていませんがとても立派な小屋でびっくりしました。ここでも水がジャバジャバ出ています。途中でこんなに水の補給ができるのはありがたいです。

八合目避難小屋

 それから不動平まで歩きます。岩手山がどっしりと構えています。

岩手山

 今日は「お鉢巡り」をしたいので右手の道へ急登を登ります。振り返ると不動平が外輪山に取り囲まれているのがよくわかります。

不動平を振り返る

 お鉢巡りはまずお鉢の中に入って行って岩手山神社によります。大きな刀が天に向かって刺さっていました。刀は日光男体山でもありました。山岳信仰の象徴なのでしょうか?
 そこからお鉢に登り返します。トンボがたくさん飛んでいました。

岩手山お鉢巡り

 お鉢の中には「妙高山」と言う均整のとれた小山があります。火山の中にある火山。岩手山は一応今でも「噴火警戒レベル1活火山であることに留意」の山なのです。

妙高山

 山頂は大勢の人で賑わっています。さすが日本百名山。

岩手山 山頂

 山頂からは八幡平の平らな山々を見下ろすことができます。かつて葛根田川を沢登りしたときは、岩手山がこんなに近い山だとは知らなかった。その時に下山口となった松川温泉は岩手山の登山口でもあったのです。今思い返しても、あの沢登りは最高でした。

八幡平を見下ろす

 そこからはもう何も考えずに焼走りまで下山します。意外としんどかった。焼走りの湯でお風呂に入って、タクシーを呼んで(2940円)大更駅まで送ってもらい、電車はないので、そこからバスに乗って盛岡へ戻りました。盛岡では「ぴょんぴょん舎」というお店で冷麺を食べました。美味しかったです。

 この冷麺にイーハトーブの名前がついていて、ここが宮沢賢治を生んだ土地だったと今更ながら気づきました。宮沢賢治はなんとも異次元な浮遊感があっていいのだけど、僕にとってはのめり込みにくい作家だ。
 盛岡高等農林学校時代の知人との交流が、作品に与えた影響を考えることはとても興味深いと思う。

20221001ぴょんぴょん舎.jpg

■岩手山 (2022/10/1)
馬返し(6:30/10:05)岩手山(10:25/12:55)焼走り



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青森・弘前 縄文、レトロ建築とおいしいご飯、酒 [東京での登山と日常]

 岩木山を登るためにはるばる青森まで来ました。せっかくだから観光もしようと、まずは青森駅から歩いてすぐの青森魚菜センターの「のっけ丼」で腹ごしらえです。2000円のチケットを買って、市場で売っている新鮮なお刺身を乗せて行きます。気前よく「のっけて」いくと、最後お味噌汁を買う時にはチケットがなくなって追加購入してしまいました。まあ、いいか。美味しかった!お醤油の加減が意外と難しいなあと思いました。

20220924のっけ丼.jpg

 昼ごろになると雨が上がって来ました。次はぜひ行って見たいと思っていた「三内丸山(さんないまるやま)遺跡」です。これはガイドさんの話を聞きながら見学するのが一番ですね。ガイドさんのお話がとても興味深くて、「この人通販の売り込み」もできるのではないかという実力の持ち主でした。

20220924三内丸山遺跡.jpg

 今から約5,900〜4,200年前の大規模な集落跡は1992年に本格的な調査が始まりました。中でも特筆すべきが大型の掘立柱建物跡です。柱の穴には直径1mのクリの柱が残っていました。上の写真に映っている復元柱はゼネコンの「大林組」が建物の重量を割り出して規模を推定して建てたものだそうです。復元するときは屋根をつけるかどうかなど侃侃諤諤の議論があったそうですが、「建設途中の姿である」としてあえて完成形にはしなかったそうです。

20220924三内丸山遺跡の穴.jpg

 関西に住んでいると、弥生時代の高床式の大型建物に出会うことはありますが(例えば泉大津市の池上曽根遺跡)、縄文時代にここまでのものを作っていたとは驚きです。高度な文明を持っていたのですね。縄文時代のイメージがガラリと変わりました。これだけの文明を持っていたのにどこへ言ってしまったのでしょう?

 さて青森から奥羽本線に乗って弘前へ向かうと、翌日登る岩木山が雄大な裾野を広げて悠然としています。「これはすごいな」と思わず声が出てしまいました。

20220924弘前城.jpg

 弘前城は江戸時代後期に作られたお城ですが、石垣工事のために今は本来の場所から避難している状態でした。東北で唯一の現存天守とのこと。ここからみる岩木山が大きくてまたすごかった。他の観光客も「わーすごいね〜」と声を出していました。

 弘前には明治大正期の洋風建築がたくさんあります。市では「趣のある建物」として指定しているそうです。下の建物は土手町界隈の交差点に建つ「三上ビル」です。昭和2年建築の東北では初期の鉄筋コンクリート造の建物だそうです。喫茶店などが今もやってようでしたが、この日はお休みでした。こんな風に普通に街角にあって存在感を出しています。

20220924三上ビル.jpg

 下の写真は「旧弘前市立図書館」です。明治39年に建てられました。八角形の双塔を持っている洋館ですが、和の様式も取り入れていて、なんともエモーショナルです。すごいな、弘前は…。

20220924旧弘前図書館.jpg

 弘前の夜は居酒屋の「ドデノメヘヤッコ」というお店へ行って(写真はとっていません)、日本酒を飲み比べしました。うまい!ご飯も美味しかった。ここで飲んだ「豊盃(ほうはい)特別純米」をお土産に買いました。

 翌日、岩木山から下山すると弘前で時間があったので、「中みそ」というラーメン屋さんに行きました。ショッピングビルのフードコートにあるとは思えない美味しさでした。甘い味噌とニンニクと生姜がきいた味噌ラーメン。めちゃくちゃ美味しかったです。

20220925味噌ラーメン.jpg

 というわけで、青森を満喫することができました。旅は新しい発見があるし、いろんな人とも出会えるし、やっぱり面白いな〜。
 思い切って行ってよかったです。

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